パーリ仏典『テーリー・ガーター』より女人禁制、男尊女卑思想の是非について考える

和歌山県にある真言密教の聖地である高野山は、かつて、女人禁制の地として女性の参拝は明治時代まで出来ず、高野山の入り口付近にある女人堂までしかお詣りが出来なかった過去がある。

また、男尊女卑、つまり、男性が尊く女性は卑しいという思想は仏教思想から来ているとも言われてきた。

お釈迦様が使用していた言語、パーリ語で書かれたお経で、紀元前3世紀頃から紀元前1世紀頃、スリランカに伝えられたお経に『テーリー・ガーター』というお経がある。

この『テーリー・ガーター』というお経は、お釈迦様の弟子である女性修行者たちが修業し悟りを開くことが出来た後に語られた体験談などが記されている。

パーリ語で書かれた『テーリー・ガーター』の原文と日本語での解説が共に掲載された書籍「パーリ文『テーリー・ガーター』翻訳語彙典 植木雅俊著 法蔵館」という書籍がある。

その書籍の著者、植木雅俊博士によると、その『テーリー・ガーター』というお経は日本や中国、朝鮮などの北伝仏教には伝えられなかった。という。

また、この書籍の前文の解説で次にように書かれている。

「女性であることが一体、何の妨げをなすのでしょうか」。

女性差別の社会で釈尊と出会い、自己の尊さに目覚めた尼僧たちの赤裸々な体験談。

「女性差別の著しい古代インド社会にあって苛まれていた女性たちが、釈尊と出会って、人間としてあるべき“普遍的真理”(dhamma、法)を覚知し、真の自己に目覚めて人格の完成を果たすとともに、自己の尊さに目覚めて溌剌とした生き方に蘇生していった体験が赤裸々につづられている。

その女性たちが、異口同音に「私は解脱しました」「私は覚りました」「私はブッダの教えをなし遂げました」「私の心は安らいでいます」と誇りをもって語っているのである。……

後世にゆがめられた仏教の女性観を正し、歴史的人物としての釈尊の女性観を知る上で、『テーリー・ガーター』は欠かすことのできない重要な文献であることが理解されよう。」

と著者の植木博士は説かれている。

もし、この『テーリー・ガーター』が千数百年前の日本の仏教伝来の際に伝えられていたならば高野山の女人禁制や昔から一部で言われてきた男尊女卑という思想は、ひょっとするとなかったのではないかと思われるほど貴重なお経であると思われる。

また、仏教を真に理解、解読しようとするならば、お釈迦様が実際に使用されていたパーリ語で仏典を研究しなければならないと思われる。

この書籍「パーリ文『テーリー・ガーター』翻訳語彙典 植木雅俊著 法蔵館」はパーリ語と日本語の解説が併記されており、500頁以上の大部の書物であり、比較的高価な書物ではあるがパーリ語の学習には最適のテキスト、最適な参考書であると思われる。

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