仏教が説いた、ケチと分かち合いについての話、盂蘭盆経、餓鬼事経、施餓鬼供養などについての話

パーリ仏典サンユッタ・二カーヤ(南伝大蔵経)において仏陀は次のようにお説きになられている。

「この世でもの惜しみをし、吝嗇(りんしょく)、ケチで乞う者をののしり退け他人が与えようとするのを妨げる人々、かれらは地獄、畜生の胎内、閻魔の世界に生まれる。

もし人間に生まれても貧窮貧乏の家に生まれる。

そこでは衣服、食物、快楽、遊戯を得る事が難しい。

愚かな者達はそれを来世で得ようと望むがかれらはそれが得られない。

現世ではこの報いがあり死後には悪いところに落ちる」

「この世において人たる身を得て気前よく分かち与え、物惜しみをしない人々がブッダの真理の教えとに対し信仰心があり、修行者の集いに対して熱烈な尊敬心をもっているならばかれらは天界に生まれてそこで輝く。

もし人間の状態になっても富裕な家に生まれる。

そこでは衣服、食物、快楽、遊戯が労せずして手に入る。

他人の蓄えた財物を他化自在天のように喜び楽しむ。

現世ではこの報いがあり死後には善いところに生まれる。」

書籍「南伝大蔵経 第十二巻 相応部経典一 大蔵出版社」参照。

書籍「南伝大蔵経 第十二巻 相応部経典一 大蔵出版社」参照。

また、パーリ仏典「ウダーナヴァルガ」において分かち合うことの大切さが説かれている。

「信ずる心あり、恥を知り、誡(いまし)めをたもち、また財を分かち与える。これらの徳行は、尊い人のほめたたえることがらである。

この道は崇高なものである。とかれらは説く。

これによって、この人は天の神々におもむく。

もの惜しみする人々は、天の神々の世界におもむかない。

その愚かな人々は、分かち合うことをたたえない(賞賛しない)。

しかし、この信ある人は分かち合うことを喜んでいるので、このようにして来世には幸せとなる。」

 

次に、盂蘭盆会という行事があります。

この行事は餓鬼界に落ちて苦しんでいる餓鬼を供養する為の仏教行事です。

餓鬼界とは生前もの惜しみ心が強く、ケチで、人に親切でなく、布施をしたりせず、悪い事をした者が死後に生まれ変わっていく境涯であります。

餓鬼界には食物がほとんどなく、空腹で苦しみ、仮に食べ物があっても食べ物を食べようとすると火になって燃えてしまったりする。

そういった餓鬼界で苦しんでいる餓鬼達に食べ物を供養したり、食事が出来るように餓鬼達を救う為の行事を盂蘭盆会や施餓鬼供養といいます。

餓鬼へのご供養をする為のご真言が仏教経典には書かれている。

真言には無量威徳自在光明殊勝妙力等の餓鬼を供養するご真言があるが、施餓鬼の経典として有名な「仏説盂蘭盆経」「仏説救抜焔口餓鬼陀羅尼」等の経典に詳しく記載されている。

次に、仏教のお経に餓鬼事経(がきじきょう)というお経があります。

この餓鬼事経(がきじきょう)というお経はパーリ五部経典(パーリ語 五部経典)の中の小部経典に属するお経であります。

餓鬼事経は全部で五十一話あり、その話の主な内容は、餓鬼、死者、幽霊達が生前 つまり生きている間に悪業(わるいこと)を行い、その悪い事をしたことによる悪い報いによって、死後に悪い境涯、餓鬼界(がきかい)に落ちて苦しみ、困っている状況の話が説かれている。

このお経において善因善果、つまり自分の善いおこないは自分に善い結果、善い報いを生む、悪因悪果、つまり自分の悪いおこないは自分に悪い結果、悪い報いを生む、つまり、因縁果報(いんねんかほう)、因果応報(いんがおうほう)についての具体的な話が餓鬼、死者、幽霊達の話を通じて説かれている。

また重要な年中行事、施餓鬼会(せがきえ)の源流に関係があると考えられるお経がその餓鬼事経に収められている。

「死者たちの物語 餓鬼事経和訳と解説 藤本晃訳著 国書刊行会」という書籍において餓鬼事経(五十一話)の全訳(日本語訳)が説かれている。

次に、佛説救抜焔口餓鬼陀羅尼経というお経があります。

そのお経の主な内容は、昔、お釈迦様の直弟子の阿難尊者がある夜、閑静な場所に独り座し仏様の教えの内容を深く観じていると深夜に一人の餓鬼が現れた。

その姿は、髪は蓬(よもぎ)のように乱れ口からは焔(ほのお)を吹き身体はやせこけ咽(のど)は針の如く細く爪は長くとがり顔に苦悶の形相が凄く、阿難尊者に向かってこのように言った。

「あなたは三日後に死んで私のように餓鬼となるであろう。」と。

阿難尊者は内心大いに恐れ「どのようにしたらこのような苦しみから解放されることが出来るのだろうか」と反問したところ餓鬼が次のように答えた。

「この世界に満ちている多数の餓鬼に飲食を施し、多数の仙人、多数の修行者及び三宝(仏、法、僧)に供養をすれば、その功徳に依って私も餓鬼の苦しみから解放され、あなたも寿命を延ばし餓鬼界に堕ちる事はないでしょう。」と言って姿を消した。

阿難尊者は仏様にその出来事について相談をし仏様から餓鬼供養のご真言や供養法を教わった。

そして、その法を修したところ阿難尊者も天命を全うし餓鬼の苦しみも解脱したとあります。(大正新修大蔵経第21巻(密教部四)464P~465P参照。)

次に、盂蘭盆経というお経があります。

書籍「国訳一切経 経集部 第十四巻 大東出版社」参照。

 

書籍「国訳一切経 経集部 第十四巻 大東出版社」参照。

その主な内容は

今から約2500年程前のインドにおいて仏教の開祖お釈迦様が活躍されていた時代、お釈迦様の直弟子に目連尊者(もくれんそんじゃ)という方がおられた。

その目連尊者はお釈迦様の直弟子の中において神通の力が最も優れていると認められていた方であった。

その目連尊者が修行により悟りを開くと直ちに故郷の母を想い起こし目連尊者自身の天眼通(超人的な透視力、霊眼)により母の所在を探すと母はもう既に亡くなっており餓鬼道に堕ちて苦しんでいる事を知った。

目連尊者は悲しんで自分自身の神通力により母の傍らに赴き、手づから食物を捧げると母はうれし涙にくれ直ちに食物を口に入れようとするも過去の悪業報の報いにより食物はそのまま火炎となって燃え上がり食べる事が出来なかった。

母は悲泣し目連尊者もどうすることも出来ず赤子のようにただ泣くのみであった。

その後、目連尊者はお釈迦様の所に趣き母の苦しみを救って欲しいと願い出た。

するとお釈迦様は次のように説かれた。

「目連の母は生前の悪業が深いので目連の力だけではどうする事も出来ない。

このうえは十方(多数)の衆僧(修行僧)の威徳に頼る他は無い。

七月十五日は僧懺悔の日、仏歓喜の日であるから、その日に飲食を調えて十方の衆僧を供養するがよい。

そうすればその功徳により母の餓鬼道の苦しみも消えるであろう。」

と説かれたので目連尊者はその教えの通りに行うと母の餓鬼道の苦しみを救う事が出来た」とあります。

余談だが、目連尊者は、自分の母親が餓鬼界から脱出することが出来たのを知り、非常に歓喜し、狂ったように躍り喜んだ。

他の修行者たちは、普段は冷静沈着、真面目で実直勤勉な目連尊者が狂ったように踊り喜んでいる様子を見て非常に驚いた。

その目連尊者の踊る姿が、毎年、夏に行われている盆踊りの起源であり、盆踊りの始まりであったといわれています。

次に、阿含経において着服、横領、盗み、窃盗, 掠め取り、収奪について説かれているお経が存在する。

その主な内容は、その目連尊者がある時、奇怪な姿をした霊的な生き物を見た。

その奇怪な姿をした霊的な生き物は生前(前世、生きている間)において他人の食べ物をひそかに盗み、かすめ取る行為を行い、その食べ物をひそかに盗み、かすめ取った罪業の報いにより死後において多くの地獄の苦しみに苦しんでいる。という内容が説かれている。

「国訳一切経 印度撰述部 阿含部二 大東出版社」 雑阿含経第十九巻 第四弟子諸説誦 第二目犍連相應「不分油経 盗取七菓経 盗食石蜜経 盗取二瓶経 比丘経」

「大正新脩大蔵経 第二巻 阿含部下 大蔵出版」百三十八頁(ページ)上段中段参照。

次に、真言宗の開祖、弘法大師空海様の晩年の著作である「秘密曼荼羅十住心論第一巻」において盗み、窃盗、泥棒、収奪の業報について説かれている箇所がある。

そのなかで空海様は雑宝蔵経(雑蔵経 大正新修大蔵経第十七巻 経集部四 五五七頁)というお経を引用し次のようにお説きになられている。

そのお経の概要は

「ある一人の鬼(死者)がいた。

その鬼が仏弟子である目連尊者に対しこのように質問した。

「私の腹は極度に大きく、のど、手足は極度に細くて食べ物や飲み物を取ること、食事をする事が出来ない。

何が原因でこのような苦しみを受けるのか。

目連尊者は答えて言った。

「あなたは前世(前生)において高い地位にあり富貴、裕福で、さまざまな食事、お酒を大いに楽しんだが、他の人々を軽視し、侮り(あなどり)、見下し他の人々の飲食を奪(うば)い取り、他人を飢(う)えさせ、他人を困らせた。

このような、他の人々の飲食を奪い取り、他人を飢えさせ、他人を困らせた行い、行為、因縁、業報、罪の報いによりこのようなひどい苦しみを受けている。

これは(あなたが作った)果報、業報であり、このような罪の報いによる地獄の苦しみは後になって受けるのである」と。説かれている。

書籍「弘法大師著作全集 第一巻 勝又俊教(編) 山喜房仏書林」参照。

 

書籍「国訳一切経 印度撰述部 経集部 第十四巻 大東出版社」参照。

書籍「国訳一切経 印度撰述部 経集部 第十四巻 大東出版社」

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