仏教が説く、盗み、泥棒、窃盗、略奪行為に対する死後における報い。

「因果は巡る小車」という諺があるが、その意味は善行も悪行も自分に返ってくる。

一般的には悪いことをした報いは自分に返ってくるといった意味。

つまり、自業自得のような意味に使われがちですが「輪転五道罪福報応経」という仏教のお経によると、わるいことだけではなく、よいことをした報いも自分に返ってくるとされています。

何かをしくじって、一般的に、ごまかしたり、やり過ごせたりしても後になってそれが原因となり自分の身に災難が降りかかってくるケースは少なくありません。

当然のことと思った善行によって後々、その相手から窮地を救ってもらえる例もあります。

こちらは情けは人の為ならずと同義です。

ところで、現代において典型的な盗みの罪として、

振り込め詐欺、オレオレ詐欺、架空請求詐欺、ワンクリック詐欺、ひったくり、

ぼったくり、いかさま、スリ、着服、横領、不正請求、ペーパー商法、

悪徳商法、金融犯罪、強盗、強奪、置き引き、持ち逃げ等の罪などがある。

仏典では、そのような悪事、悪業を犯すと未来、死後、来世においてその悪事、悪業の罪の報いとして

地獄界、鉄窟地獄(てつくつじごく)、寒氷地獄、餓鬼界(飢えや渇き等に苦しむ境涯)、

畜生界の三悪道、三悪趣という大きな悩み苦しみに満ちた残虐、悲惨な境界、

地獄 獄卒絵

人間に生まれるならば撲隷(奴隷)、無幸処(幸せの無い境界)、極貧、貧困等の大きな悩み苦しみ多き境涯に生まれ変わると説かれている。

仏教では六道輪廻を説きます。

六道輪廻とは生き物達が

天界、人間界、修羅界、畜生界、餓鬼界、地獄界の六道。

つまり六つの境涯を途方もない膨大な期間、途方もなく膨大な回数、何度も何度も生まれ変わり死に変わりしている。

つまり、輪廻転生している事を説いている。

六道輪廻図(チベット)

六道輪廻図(チベット)

その六道のうち動物の境涯である畜生界、飢えや渇きに苦しむ境涯、餓鬼界、地獄の鬼達に残虐に責め立てられ痛めつけられ苦しめられる極めて残虐悲惨な境涯である地獄界は三悪道、三悪趣といって六道輪廻の中では最も苦しい境涯であると説きます。

増一阿含経において、生き物たちのことを、仏教用語では衆生(しゅじょう)と呼びますが、衆生は死後に、人間や神に生まれ変わるより、地獄界や畜生界、餓鬼界などの悪趣に生まれ変わる回数の方が圧倒的に多いと説いています。

仏典、増一阿含経 第七巻 五戒品 第十四において盗み、泥棒(どろぼう)、窃盗(せっとう)、略奪(りゃくだつ)行為の報いについて説かれているお経が存在する。

その主な主旨内容は、盗み、泥棒、窃盗行為を多く行った者はその罪の報いにより未来、将来、死後、来世において地獄界、餓鬼界、畜生界に生まれ赴(おもむ)くと説かれている。

また、人間に生まれ変わっても極めて貧しく、衣服や食事に極めて事欠く境涯に生まれ赴くと説かれている。

(大正新脩大蔵経 第二巻 阿含部下  576ページ中段参照、国訳一切経 印度撰述部 阿含部 八 大東出版社 106ページ~107ページ参照)

また、パーリ仏典サンユッタ・ニカーヤ、雑阿含経において仏陀は次のように説かれている。

「他人から奪った人が(来世、未来において)他人から奪われるのである。

愚か者は悪の報いが実らない間は悪の報いがない事を当然のことだと考える.

しかし、悪の報いが実ったときには愚か者は苦悩を受ける。

殺す者は(未来には)殺され、怨む者は(未来には)怨みを買う。

また、罵りわめく者は(未来には)他の人から罵りを受ける。

怒りたける者は(未来には)他の人から怒りを受ける。」

次に、パーリ仏典「ダンマパダ」及び「ウダーナヴァルガ」において
仏陀はこうお説きになられている。

「悪の報いが熟しない間は悪人でも幸運にあうことがある。

しかし、悪の報いが熟したときには、悪人は災い(わざわい)にあう。

善の報いが熟しない間には善人でも災い(わざわい)にあう事がある。

しかし、善の果報が熟したときには善人は幸福にあう。」

さらに、「ダンマパダ」(法句経)において仏陀はこうお説きになられている。

「悪しき(悪業)をなしてこの世(現世)に苦しみ、かの世(来世)に苦しみ両世(現世、来世)に苦しむ。

「我 悪しきをなせり」と思い苦しみ、難所(地獄など)に行きていよいよ苦しむ。

良き(善業)をなしてこの世(現世)に歓喜し、かの世(来世)に歓喜し両世(現世、来世)に歓喜す。

「我 良きをなせり」と歓喜し、善処(天界)に行きていよいよ歓喜す。」

さらに、パーリ仏典サンユッタ・二カーヤにおいて仏陀はこうお説きになられている。

「この世でもの惜しみをし、吝嗇(りんしょく)、ケチで乞う者をののしり退け他人が与えようとするのを妨げる人々、かれらは地獄、畜生の胎内、閻魔の世界に生まれる。

もし、人間に生まれても貧窮貧乏の家に生まれる。

そこでは衣服、食物、快楽、遊戯を得る事が難しい。

愚かな者達はそれを来世で得ようと望むがかれらはそれが得られない。

現世ではこの報いがあり死後には悪いところに落ちる」

「この世において人たる身を得て気前よく分かち与え、物惜しみをしない人々がブッダの真理の教えとに対し信仰心があり、修行者の集いに対して熱烈な尊敬心をもっているならばかれらは天界に生まれてそこで輝く。

もし人間の状態になっても富裕な家に生まれる。

そこでは衣服、食物、快楽、遊戯が労せずして手に入る。

他人の蓄えた財物を他化自在天のように喜び楽しむ。

現世ではこの報いがあり死後には善いところに生まれる。」

ブッダに供養を捧げる女性

さらに、法句経において仏陀は次のように説かれている。

「悪業の報いはたとえ大空においても大海においても奥深い山中に隠れても悪業の報いからは逃れることが出来ない。」

さらに、仏典パーリ中部経典の中の賢愚経(けんぐきょう)、漢訳仏典 中阿含経の癡慧地経(ちえぢきょう)において仏陀は次のように説かれている.

「仮に賭博(とばく)や博打(ばくち)に負け自分の妻や子供や財産を全て失い,自分も囚(とら)われの身になるという不運があったとしても、罪、悪事を犯し、その罪、悪事の報いにより死後、地獄へ堕ち、膨大な年数、極めて残虐悲惨な苦しみを受ける地獄での大苦痛大苦悩に比べれば賭博、博打に負け自分の妻や子供や財産を全て失い,自分も囚(とら)われの身になるという不運などはとるに足らない僅(わず)かな不運である。」

つまり「罪、悪事を犯し、その罪、悪事の報いにより死後地獄へ堕ち、膨大な年数、残虐で極めて悲惨な苦しみに遭遇する地獄へと堕ちる不運こそが最悪の大不幸、大不運、大損である。」という内容の説法をされている。

つぎに、真言密教(真言宗)の開祖弘法大師空海様の晩年の著作「秘密曼陀羅十住心論」や日本の浄土宗に大きな影響を与えたとされる天台宗僧侶、慧心僧都源信様の著作「往生要集」、その他多くの仏教諸経典において偸盗罪(ちゅうとうざい)つまり他者(他人)の所有物を盗む事の罪(与えられない物を奪い取る罪)の業報について説かれている。

弘法大師空海様が著された「秘密曼荼羅十住心論第一巻」において盗み、窃盗、泥棒、収奪の業報について次のように説かれている。

「また、その殺生によりて、貪害滋(しげ)く多し、滋(しげ)く多きをもっての故に、すなわち義譲なくして劫盗(こうとう)を行ず。

今身に偸盗(ちゆうとう)して、与えざるを取れば、死してすなわちまさに鉄窟地獄(てっくつじごく)に堕して、劫(けこう)の中においてもろもろの苦悩を受くべし。

受苦すなわち終わって畜生の中に堕して、駆捶打(くそくすいだ)せられて余息あることなし。

所食の味はただ水草をもってす。

この中に処して、無量に生死す。

本因縁をもって、もし、微善に遇うて、たまたま人身に復すれば、つねに僕隷(ぼくれい)となりて、駆策走使(くさくそうし)せられて自在なることを得ず。

償債(しょうさい)いまだおわらざれば、聞法することを得ず。

これによりて苦を受けて、輪廻無窮なり。

まさに知るべし、この苦はみな偸盗によることを。

・・・中略・・・・・・

「地持論」にいわく、劫盗の罪はまた衆生をして三悪道に堕せしむ。もし人中に生ずれば二種の果報を得。

一には貧窮、ニには共財にして自在なることを得ず」と。

劫盗は何が故にか地獄に堕するや。

その劫盗は人の財を剝奪(はくだつ)し偸窃して衆生を苦しめるをもっての故に、身死してすなわち寒氷地獄に入りてつぶさに諸苦を受く。

劫盗(こうとう)は何が故にか出でて畜生となるや。

それ人道を行ぜざるをもっての故に、畜生の報いを受けて身常に重きを負い、宍(にく)をもって人に供してその宿債を債う。

何が故にかまた餓鬼に堕するや。

慳貪をもってすなわち劫盗を行ずるによって、これをもって畜生の罪おわりてまた餓鬼となる。

何が故にか人となりて貧窮なるや。

その劫盗は物をして空乏ならしむるによって、ゆえに貧窮なり。

何が故にか共財にして自在なることを得ざるや。

その劫盗は偸奪して官に没せらるるによって、もし財銭あればすなわち五家のために、共せられて自在なることを得ず。

まさに知るべし。

劫盗は二の大苦なり。

・・・後略・・・・・・」

さらに、その十住心論の中で、空海様は雑宝蔵経(雑蔵経 大正新修大蔵経第十七巻 経集部四 五五七頁)というお経を引用し盗みの業報について次のようにお説きになられている。

真言宗開祖 弘法大師空海

そのお経の概要は

「ある一人の鬼(死者)がいた。その鬼が仏弟子である目連尊者に対しこのように質問した。

「私の腹は極度に大きく、のど、手足は極度に細くて食べ物や飲み物を取ること、食事をする事が出来ない。

何が原因でこのような苦しみを受けるのか。

目連尊者は答えて言った。

「あなたは前世(前生)において高い地位にあり富貴、裕福で、さまざまな食事、お酒を大いに楽しんだが、他の人々を軽視し、侮り(あなどり)、見下し他の人々の飲食を奪(うば)い取り、他人を飢(う)えさせ、他人を困らせた。

このような他の人々の飲食を奪い取り、他人を飢えさせ、他人を困らせた行い、行為、因縁、業報、罪の報いによりこのようなひどい苦しみを受けている。

これは(あなたが作った)果報、業報であり、このような罪の報いによる地獄の苦しみは後になって受けるのである」

さらに、因果の道理を知る事の重要性について弘法大師空海様は自身が著された「秘蔵宝鑰」(ひぞうほうやく)の中において次のように説かれている。

「三途の苦は劫を経ても免れがたし。如来の慈父この極苦を見てその因果を説きたもう。

悪の因果を説いてその極苦を抜き、善の因果を示してその極果を授く。

その教えを修するものに略して二種あり。

一には出家、二には在家なり。

出家とは頭を剃り衣を染むる比丘・比丘尼等これなり。

在家とは冠を頂き縷(えい)を絡(まと)える優婆塞(うばそく)・優婆夷(うばい)これなり。

上、天子に達し、下、凡庶に及ぶまで、五戒、十善戒を持(たも)って仏法に帰依するものみなこれなり。

菩薩といっぱ、かくのごとくの在家の人、十善戒を持(たも)って六度の行を修するものこれなり。

出家して大心を発するものもまたこれなり。

悪を断ずるが故に苦を離れ、善を修するが故に楽を得。

下、人天より上、仏果に至るまでみなこれ断悪修善の感得するところなり。

この両趣を示さんがために、大聖教を設けたもう。

仏教すでに存せり。

弘行人に在り。

この故に法を知るものは出家し燈(この文章では仏の教えを意味する)を伝え、道を仰ぐものは道に入って形を改む。

・・・・・・後略・・・・・」

ちなみに真言密教における十善戒とは

不殺生戒

不偸盗戒

不邪淫戒

不偸盗戒

不両舌戒

不悪口戒

無義語戒

不貪欲戒

不瞋恚戒

不邪見戒

を意味する。

書籍「弘法大師著作全集 第一巻 弘法大師(著) 勝又俊教(編)山喜房仏書林」参照。

次に、地獄に関する書物として今から約千年程前に著された有名な「往生要集」という書物がある。

西洋ではダンテにより著された「神曲」という書物が地獄について書かれた世界的に有名な書物であるが、この「往生要集」は東洋の「神曲」ともいうべき書物とも言える。

この「往生要集」は浄土宗に大きな影響を与えた書物で鎌倉時代前に活躍した天台宗の僧侶、源信(慧心僧都源信、横川僧都源信)という僧侶により書かれた書物である。

この往生要集は宗(約千年前の中国の国名)の国に贈呈され台州の周文徳という方が往生要集を国清寺に収められた。

また、周文徳は源信を小釈迦源信如来として賛嘆、褒め称えた。

また、真宗皇帝も源信を賛賞する事切なるものがあったという。

日本国においても源信様は今迦葉(迦葉とはお釈迦様の在世当時の十大弟子の一人 優秀な高弟の名前)と呼ばれ、源信を賛賞する事切なるものがあったという。

この書物の前半では地獄界 餓鬼界などの状況等について各教典論書を引用し具体的に書かれている。

又、どのような行為(例えば殺生、盗み、妄語、邪淫、飲酒など)によりどういう境涯(例えば地獄界、餓鬼界、畜生界など)に赴くのかが記載されている。

また、仏の三十二相についても具体的に説かれている。

どういう種類の良い行いにより良き報い、良き境涯、優れた仏の外観相形などを得られるのかという事も書かれている。

天台宗僧侶 

慧心僧都源信(えしんぞうずげんしん)

次に、江戸時代に活躍された僧侶、臨済宗の中興の祖、白隠禅師様が書かれた書物「辺鄙以知吾(へびいちご)・壁訴訟(かべぞしょう)」という書物がある。

その書物の内容は、江戸時代の一部の殿様や将軍達の農民に対する貪欲かつ暴利を貪るが如き年貢の要求、冷酷な年貢の取立て、またその冷酷無慙な取立てにより農民達が苦しめられ、追いつめられ、ついには農民一揆という行動をとらざるを得なくなり、最後には農民達が死罪に追い込まれていった詳しい事情経緯がこの本に書かれている。

また、この書籍の中で白隠禅師は、苦しめられ追いつめられていく農民の姿を見てお殿様や将軍達に対して次のように批判した。

「あまり農民達を冷酷、過酷な取り立てで苦しめ追いつめると来世(死後)には農民達を過酷な取り立てで追いつめ苦しめた罪、悪事、悪業の報いによってお殿様や将軍様が死後において過酷で残虐、悲惨な地獄の苦しみを受けることになりますよ。」と忠告及び批判をしている。

この本は江戸時代に一時、発禁処分対象の書物であった。

臨済宗中興の祖 白隠禅師

参考文献

「生き方がうまい人のことわざの知恵 幸運社編 三笠書房 知的生き方文庫」
「大正新脩大蔵経 第二巻 阿含部下 大蔵出版社」
「往生要集 上  源 信 著  石田 瑞麿訳注 岩波文庫」
「往生要集 下  源 信 著  石田 瑞麿訳注 岩波文庫」

「弘法大師著作全集 第一巻 弘法大師(著) 勝又俊教(編)山喜房仏書林」
「大正新修大蔵経第十七巻 経集部四 大蔵出版社」
「国訳一切経 印度撰述部 阿含部 八 大東出版社」
「白隠禅師法語全集 第1冊 邊鄙以知吾・壁訴訟 白隠 慧鶴 著, 芳澤 勝弘 著 辺鄙以知吾 禅文化研究所」
「ブッダ 神々との対話 サンユッタ・二カーヤ1 中村元著 岩波文庫」
「ブッダ 悪魔との対話 サンユッタ・二カーヤ2 中村元著 岩波文庫」
「ブッダの真理のことば 感興のことば 中村元著 岩波文庫」

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